
H.S.Anderson Mad Cat vitage series
ある程度Mad Catについての知識がある人は,きっとこのギターを訝しげな目で見ていることだろう。自分が知っているMad Catとどこか違うなという違和感を感じていることと思う。
H.S. Andersonについてここでは多くを語らないが,ロゴが2種類あることは多くの人が知っている。一つはあの代表的なロゴ,どのように命名されているかは知らないが,クネクネしたユニークなロゴである。一方このギターのようなロゴもある。両者の与える印象は全く異なる。まるで成人式を金髪で終えた若者が翌日に黒髪に戻ったような,ロゴの与える印象の落差に正直私は戸惑った。こんなのはH.S.Andersonではないと主張する人が出てきても不自然ではないほどの変貌である。
なぜロゴが変わってしまったのか。
1984年版の「The 楽器」のこのギターについて以下のような記載がある。
「1972年頃,オリジナル・デザインでギターキッズをアッといわせたH.A.アンダーソンがヴィンテージ・シリーズとして再登場。これはテレキャスターのイメージをもつマッド・キャッツ。カスタム仕様のボディは,トップにトラモクがきわだち,ユニークなデザインのピックガードはべっ甲色。ペグはシャーラーM-6Lミニ,ピックアップはビル・ローレンスL-250を2基マウント。オール・ハンドメイドのハイ・コストパフォーマンス仕様。」この説明文で明らかに間違っているのはPUの仕様である。L-250ではなくブラックラベルである。
当時のギター雑誌やカタログ記載の文章は読んでいて笑ってしまう。横文字カタカナがとにかくイケてるという時代だったのだろうか。記憶に薄い。
つまり,Mad Catが再生産されたのは近年だけではなく,生産終了から10年も経たないうちに再生産されていたということである。そしてこれはあくまでも個人的な推定だが,再生産されたH.S.Andersonのギターにはこのようなロゴが用いられたのではなかろうか。
なぜあの個性的で素敵なロゴがこのような没個性的なロゴになったのか,その経緯はおそらく当事者しか知らない。ただ無駄に想像力を働かせることはできる。
想像するにH.S.Andersonを立ち上げた人々(つまり椎野氏ら)が再生産品について何らかの理由でオリジナルロゴを使うことを認めなかったから,そう考えることができないだろうか。私は次のように想像する。
わずか3人ほどのえり抜きのギター職人によって作られたギターこそがH.S.Andersonだった。H.S.Andersonが製造を中止した原因はおそらく販売実績にあっただろう。モリダイラ楽器の特別部門として設けられたH.S.Anderson部門は消滅し,彼らの作業場であったバラックのような作業小屋はただの小屋になり,えり抜き職人は量産品部門に戻された。そして何らかの理由で数年後にモリダイラ楽器からH.S.Andersonを再生産したいと椎野氏らに打診がある,しかし特別部門としてのH.S.Andersonはすでに消滅し再生産品は量産品部門で製造することになる。それに対して契約関係がすでに終了している椎野氏がこのブランドに対するこだわりから本来のブランドロゴの使用を認めなかったのではなかろうか。
それを推認させるひとつの事実としてPUキャビティ内にあったM.Shinodaのサインがないということもある。他の同じロゴを持つストラトのキャビティを確認したが,やはりこのサインはなかった。
一方ギターの作りはどうだろう。量産品部門で製造されるようになって質は落ちているだろうか。私はPrototypeのMad Catを所有しているが製品版の初期MadCatを触ったことはない。それゆえ得られた情報を手がかりに自分の感覚で述べてみたい。
作りはしっかりしていて塗装も美しい。塗装の色は濃くなっている。マテリアルはむしろオリジナルを凌駕しているる。オリジナルとは異なり寄せ木のパンケーキボディではない。マホガニーのセンター材で左右に分割された単板で,表と裏にはフィギュアド・メイプルの化粧板が貼られている。ペグはシャーラー,ブリッジとコントロール部はニッケル。再生産品の方が品質はむしろ向上しているように見える。(2026.9.20)
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