
Tokai Guitars
東海楽器のギターを語るとき、私にはいつも思い出す一本がある。
1980年代前半、大学時代に組んでいたバンドには、私のほかにT君というギタリストがいた。彼が使っていたのがTokai LS-200だった。当時の私はTokaiのLSシリーズについてほとんど知識がなく、「そこまで出すなら、なぜGibsonのレスポールを買わないの?」と聞いたことを覚えている。T君は多くを語らなかった。今思えば、ブランドの名前ではなく、楽器そのものを見れば分かる、ということだったのだろう。
当時の私はハムバッカーを載せたストラトを弾いており、レスポールそのものにも、まして国産レスポールのグレードの違いにも大した関心はなかった。それから長い年月が過ぎ、いつの間にか私自身が1980年前後のTokai LSを探し、LS-200をはじめLS-150、LS-120、LS-100、LS-80……と集めるようになった。
そして古いLSを手にするたび、ときどきT君のことを思い出す。
あの頃の私は「なぜGibsonを買わないのか」と尋ねた。今ならむしろ、「なぜ彼はLS-200を選んだのか」がよく分かる。1978年に登場したLSシリーズは、単にGibson Les Paulを模倣した国産ギターという言葉だけでは片付けにくい。上位機種になるほど材、構造、仕上げに徹底してこだわり、当時の日本のギター製造技術がどこまで本家に迫れるかを真正面から試したような楽器だった。とりわけ1970年代末から1980年代初頭のLSシリーズは、現在でも国内外で高く評価されている。もっとも、その「本家への接近」は日本製コピーギターの黄金期を生み出すと同時に、海外メーカーとの知的財産をめぐる問題にもつながっていった。Tokaiもその渦中に入り、1980年代半ばには経営上の大きな転機を迎えることになる。
しかし東海楽器はコピーだけの会社ではない。Cat's Eyes、Talboをはじめ独自の製品も生み出し、OEMメーカーとしても長い歴史を持つ。東海楽器という会社の面白さは、優れた模倣品を作ったことだけではなく、高い製造技術を背景に、既存の楽器を徹底的に研究する仕事と独自の楽器を生み出す仕事の両方を続けてきたところにあるのだと思う。
ここに並べたギターの多くは、私が大学時代にはその価値を理解していなかった時代のTokaiである。そう考えると、このコレクションは四十数年前、T君のLS-200を前にして抱いた疑問への、ずいぶん遅い答えなのかもしれない。






















